ダルマとは?
ダルマ(Dharma, धर्म)とは?
ダルマ(Dharma, धर्म)は、「宇宙の法則」「道徳的な義務」「正しい行い」を意味するサンスクリット語であり、ヒンドゥー教、仏教、ジャイナ教などインドの宗教哲学における中心概念の一つです。ダルマは個人の立場や状況に応じて異なり、「人生の目的」としても重要な役割を果たします。
1. ダルマの基本的な意味
ダルマの概念は広範であり、「自然の法則」「社会的秩序」「個人の義務」などを含みます。
(1) 語源と原義
- 「Dharma(धर्म)」の語源は「धृ(Dhṛ)」(支える、維持する、保持する)に由来し、
→ 「宇宙や社会を支える法則」「正しくあること」を意味する。 - ヒンドゥー教では「宗教的・道徳的な義務」
- 仏教では「真理(ダンマ, Dhamma)」
- ジャイナ教では「魂を解放する教え」
(2) ダルマの主要な特徴
- 宇宙の法則:自然や社会が調和するための普遍的な法則。
- 倫理・道徳の指針:正しい行動や義務を示す。
- 個人の義務(スヴァダルマ, Svadharma):人それぞれの役割に応じた道徳的行動。
- 社会的秩序(ヴァルナ・アシュラマ・ダルマ):カーストや人生の段階ごとの義務。
2. ヒンドゥー教におけるダルマの分類
(1) 個人の義務としてのダルマ(スヴァダルマ)
- 人は自分の立場や状況に応じた正しい行いをすることが求められる。
- 例:王は正義を守る、僧侶は宗教を教える、商人は経済を支える。
- 「バガヴァッド・ギーター」では、戦士アルジュナが「戦うことがダルマ」と説かれる。
(2) 社会秩序としてのダルマ
- ヴァルナ・ダルマ(Varna Dharma):カースト制度に基づく義務。
- アシュラマ・ダルマ(Āśrama Dharma):人生の4つの段階(学生期・家長期・隠居期・解脱期)ごとの義務。
3. 人生の目的(プルシャールタ, Purushārtha)とダルマ
インド哲学では、人生には4つの目的(プルシャールタ)があるとされます。
(1) 4つの人生目標
プルシャールタ(Purushārtha) | 意味 | 目的 |
---|---|---|
ダルマ(Dharma) | 道徳・義務 | 正しく生きる |
アルタ(Artha) | 富・成功 | 経済的安定 |
カーマ(Kāma) | 愛・性愛・快楽 | 幸福と喜び |
モークシャ(Moksha) | 解脱 | 輪廻からの解放 |
(2) ダルマとカーマスートラの関係
- カーマ(性愛・快楽)も人生の目的の一つであり、ダルマ(道徳)と調和する形で追求すべきとされる。
- カーマスートラ(性愛の技術書)も、単なる官能的な書物ではなく、ダルマに基づいた幸福な人生の追求の一環として存在する。
- 性愛(カーマ)がダルマ(道徳)に反しないことが重要とされる。
4. カーマスートラにおけるダルマの役割
カーマスートラは単なる性愛書ではなく、恋愛・結婚・社会的関係を含めた人生哲学の一部です。
(1) カーマとダルマのバランス
- 性愛はダルマ(道徳)に従って行われるべき。
- 快楽のみを追求すると人生が崩れるが、抑圧しすぎても不幸になる。
- カーマスートラは倫理的な恋愛や結婚、家庭の維持を重視する。
(2) ダルマに基づく恋愛・結婚のルール
カーマスートラでは、結婚や恋愛に関する倫理を重要視しています。
- 結婚相手の選び方(同じカースト、家族の承認など)
- 妻と夫の義務(夫は経済を支え、妻は家庭を守る)
- 不倫や浮気はダルマに反する(ただし例外的な状況は考慮される)
5. まとめ
- ダルマとは「宇宙の法則」「道徳」「個人の義務」を意味する概念。
- 人生の目的(プルシャールタ)の一つであり、カーマ(性愛)と調和すべき。
- カーマスートラでは、性愛がダルマとバランスよく実践されるべきと説かれる。
- 恋愛・結婚・社会関係においても、倫理的な基準としてダルマが重要視される。